建物などの壁に描かれたミューラル(壁画)とグラフィティー(落書き)の定義の違いは何でしょうか。ニュージーランドで3月に起きたモスク銃乱射事件後に創られた「エッグボーイ」や、オーストラリア先住民の歴史と現在に焦点を当てた作品など、シドニーの3つのミューラルアートに注目し、そのコンセプトを考えてみました。
投稿者: heapsart
【後編】オーストラリアの「テント大使館」対「和解プレース」、あるいは先住民 VS 連邦政府
オーストラリア先住民による「先住民大使館」は俗に「テント大使館(The Tent Embassy)」とも呼ばれ、今も首都キャンベラでパブリックアートのように先住民の権利を静かに主張し続けています(前編参照)。後編では、テント大使館の設置以降、1980〜90年代の労働党政権による先住民への歩み寄りと、その後テント大使館に対抗する保守連合政権側のパブリックアート設置の経緯などを解説します。(文=恵啓)
【前編】オーストラリアの「テント大使館」対「和解プレース」、あるいは先住民 VS 連邦政府
オーストラリアの首都キャンベラで注目すべきものの一つが、オーストラリア先住民と連邦政府のパブリックアート対決です。それは静かに、しかしあからさまに勝負を続けています。
先住民側の仕掛けは、旧国会議事堂(Old Parliament)前の広場に1972年に立ち上げられ、数度の断続を経て、1992年のオーストラリア記念日から恒久的に維持されている「先住民大使館」、あるいは俗に「テント大使館(The Tent Embassy)」と呼ばれるものです。(文=恵啓)
海にもインスタにも映える野外アート展スカルプチャー・バイ・ザ・シー(シドニー)2018まとめ
シドニーの晩春から初夏を彩る海辺の野外彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」が、2018年も10月末〜11月初頭にかけて開催されました。オーストラリア国内外の彫刻家が参加し、日本人アーティストの作品も多数展示。第22回目の今年展示された彫刻作品と、アートの「ソーシャルメディア映え」のトレンド、そしてオーストラリア西海岸パースでの2019年のスカルプチャー・バイ・ザ・シー開催概要をまとめて紹介します。
グレートバリアリーフは瀕死、でも基金は詐欺?どうなるオーストラリアの世界遺産
オーストラリア近海にある世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフは、地球温暖化や公害などの影響で死滅の危機に瀕しています。グレートバリアリーフを保護する動きも活発化している一方、オーストラリア政府からの4億4,330万豪ドル(約364億円)もの巨額の助成金を受け取った保護基金「グレートバリアリーフ・ファウンデーション」は大企業幹部や政治家の関与が明らかになり、助成金の不正受給の疑いが報道されています。ユネスコの世界遺産でありながら「危機遺産」の指定の可能性もあるグレートバリアリーフの現状と、環境保護をめぐる動きについてまとめました。
「オーストラリア先住民のアート」なのに海外産? 本物vs偽物をめぐる倫理と規範
有名なオーストラリア土産の1つとして、先住民族(アボリジニー)の工芸品や伝統の模様を用いた製品があります。こうした「先住民アート」に似せて作られた海外産の模倣品(偽物)が問題化していることをご存知でしょうか。インドネシア産でもオーストラリア産と表示できてしまう法律、それを知りながら取り扱う土産物店、何も知らずに購入する旅行者……。シドニーで開催された、オーストラリア先住民のアートを取り巻く業界の歪みを考えるトークイベントの様子や、先住民アート・コードという倫理規範、今年行われた偽物のお土産品の卸売業者の取り締まりなどについてお伝えします。
オズハーベスト、シドニーの期間限定カフェの食品廃棄ゼロだけじゃないコンセプト
2017年にシドニーで飲食店などの余剰食材だけを扱うスーパーマーケットをオープンしたことで話題になったフード・レスキュー団体「オズハーベスト」が、今度はカフェを期間限定で開店しました。このオズハーベスト・カフェは、飲食店や食品卸業者から出た「使えるのに廃棄になる食材」を活用したメニューを提供し、食品廃棄を防ぎながら利益をチャリティーに回すという新たな循環の可能性を提示しています。オズハーベストは具体的にどんな活動をしているのか、カフェではどんな食材が使われているのか、美味しくおしゃれなメニューと共に紹介します。
オーストラリア農業を襲う干ばつの現状と、国民の「マイトシップ精神」とは?
オーストラリアで深刻な干ばつによる飼料不足に悩む農家を、国民の寄付で助けようという動きが広がっています。約1,200頭の羊の殺処分に直面した畜産農家の悲惨な現状をオーストラリア国内のメディアが報道した直後から、政府より早く有志や民間団体がサポート活動を開始。こうした困難な状況が発生したときに発揮される、オーストラリアの助け合いの精神「マイトシップ」を考えます。
現代美術家・池田亮司の音と光の巨大インスタレーション「micro | macro」をシドニーで体験
フランス在住の日本人アーティスト池田亮司さんのインスタレーション作品「micro | macro」が、シドニーのキャリッジワークスで展示されました。アート作品を鑑賞するというより、音と光、イメージの洪水に全身を任せるような不思議体験をしてきました。池田亮司さんについて、また今回の展示作品について、そして同時開催中の、フランス人コンセプチュアルアーティストのダニエル・ビュラン展も紹介します。
SF的ディストピアを映し出す中国現代アート展「The Sleeper Awakes」@ホワイトラビットギャラリー(シドニー)
「表現の自由」への規制が厳しい国や地域では、どんなアーティストがどのような表現活動を展開しているのでしょうか。シドニーのホワイト・ラビット・ギャラリーで8月5日まで開催中の展覧会「The Sleeper Awakes」で、現代社会における検閲や監視、孤立や不安をテーマした中国の現代アート作品が展示中です。古典SF作家H.G.ウェルズのディストピア小説のタイトルを冠し、人気につき会期を延長した同展に行ってきました。
NAIDOCウィークとは? 2018年はオーストラリア先住民の芸術家によるアート展も
オーストラリアでは真冬にあたる毎年7月、NAIDOCウィークというイベントが開かれます。今年2018年は7月8〜15日に開催され、オーストラリア先住民族の文化や歴史を紐解き讃えるセレモニーや講演、ダンス、アート展など様々なプログラムが用意されました。そもそもNAIDOCとは? さらにNAIDOCウィークの今年の開催テーマ、シドニー近郊で7月22日まで開催中の展覧会、会場となったデザイナーズ家具のショールーム「コスケラ(Koskela)」についてお伝えします。
パルムドール受賞作『万引き家族』(是枝裕和監督)のオーストラリアでの評判は?
『誰も知らない』『奇跡』『そして父になる』などの代表作で家族の在り方にスポットライトを当ててきた是枝裕和監督の『万引き家族』が今年、カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞しました。オーストラリアでは同作の一般上映はまだですが、6月のシドニー映画祭で急遽上映され、チケットは見事ソールドアウトに。家族という存在や人と人のつながりを描き非常に見応えのあった『万引き家族』の、あらすじや見どころ、メディアを通じて見たオージーの反応などをまとめました。
芸術家アイ・ウェイウェイ監督の映画『ヒューマン・フロー』を難民週間のオーストラリアで鑑賞
世界で6,850万人に上るといわれる難民の現実を描いた映画「ヒューマン・フロウ(Human Flow)」は、中国出身の芸術家で自身も政治難民のアイ・ウェイウェイによるドキュメンタリー作品です。紛争や迫害、気候変動など危機的状況の続く故郷から逃れ、辿り着いた先でも多くの困難に苦しむ世界の難民の実情がフィルムに収められています。同作品を、世界難民の日にちなんでオーストラリアで開催された「難民映画祭」で鑑賞した感想と合わせて、世界やオーストラリアの難民の現状についても考えてみました。
2020年シドニービエンナーレ芸術監督はブルック・アンドリュー、初の先住民族ゆかりのアーティスト
2020年に開催予定の第22回シドニービエンナーレの芸術監督に、オーストラリア先住民族ウィラドゥリのアーティスト、ブルック・アンドリューが決定しました。先住民につながりのある芸術監督が就任するのは、シドニービエンナーレ史上初めてのことです。2年後のビエンナーレに向け注目が集まるブルック・アンドリューのこれまでの現代アート作家としての活動や、ウィラドゥリ・ネーションについてまとめました。
アイ・ウェイウェイ「Law of the Journey」ほか − シドニービエンナーレ作品鑑賞記⑥
巨大な漆黒のボートの上には、うつむくように背を向けて並ぶ顔のない人々が。「難民」をテーマにした中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイ(Ai Weiwei、艾未未)の大型作品が、オーストラリアのアートイベント「シドニービエンナーレ」の目玉作品の1つとして、コカトゥー島に展示中です。小説家フランツ・カフカや現代思想家ハンナ・アーレントの警句も散りばめられた同作の、「難民の捉え方」に対するメッセージを探ってみました。
野口里佳「Small Miracles(小さな奇跡)」ほか − シドニービエンナーレ作品鑑賞記⑤
今年のシドニービエンナーレに参加している5人の日本人アーティストの中で唯一、写真作品を出展しているフォトグラファーの野口里佳(Rika Noguchi)さん。光の反射やゆらめき、影、表面張力、磁力、重力といった自然の力を感じる日常の瞬間を切り取った「小さな奇跡」など、繊細な感覚を柔らかな視線で写した作品がNSW州立美術館に展示中です。
野外彫刻展「ヒルビュー(Hillview)」で体験するアートとオーストラリアの自然
オーストラリアの美しい自然の中でアート作品を鑑賞できる野外彫刻展「ヒルビュー(Hillview Sculpture Biennal 2018)」が、NSW州南部のサットンフォレスト(Sutton Forest)で5月27日まで開催中です。ローカルのほか日本人を含む海外出身の現代アーティストの作品が、丘陵地帯の自然と一体になった状態で楽しめます。紅葉の美しいオーストラリアの高原エリアでの秋のアート体験をまとめました。
柳幸典「Icarus Container」ほか − シドニービエンナーレ作品鑑賞記④
産業や技術の発展に対し静かに力強い目線を向ける、現代アーティスト柳幸典(Yukinori Yanagi)さんのインスタレーション作品3点がシドニービエンナーレで展示中です。作品は、核実験や原子力爆弾といった近現代を象徴するテクノロジーにスポットを当てています。ビエンナーレ展示会場のコカトゥー島にぴったりの同作の鑑賞体験を、写真を交えてお伝えします。
流井幸治「Jamais vu(ジャメヴュ、未視感)」− シドニービエンナーレ作品鑑賞記③
「Jamais vu, 2018」(ジャメヴュ、未視感)と題した、床一面に並べられた無数のガラス器と、不思議な残響の調べが織りなすサウンドスケープ。京都出身、シドニー在住の日本人アーティスト流井幸治(Ryui Koji)さんによる同作品は、オーストラリアの現代アート展「シドニービエンナーレ」の会場に展示中です。目だけでなく耳や肌で感じる「美」や「違和感」の体験をまとめました。
井上亜美「The Life of the Hunter(猟師の生活)」− シドニービエンナーレ作品鑑賞記②
猟師の祖父、命を食べるということ、東日本大震災後の放射線物質の影響など、現代の狩猟を通して「生と死」を映し出した、井上亜美さんの映像作品「猟師の生活(2018)」のレビューと感想です。井上さんはアーティストで猟師(!)だそうです。
高山明「Our Songs – Sydney Kabuki Project」− シドニービエンナーレ作品鑑賞記①
シドニービエンナーレで、日本人アーティスト高山明さんのビデオ・インスタレーション作品が展示中です。高山さんの作品は、多民族・多文化国家のオーストラリアで世界各国の出身者による伝統の歌や詩のパフォーマンスを映像に収めたもの。一般公募で集まったという出演者がどんなステージを展開し、それがどのような作品になったのか、そしてオーストラリアの鑑賞者はそれをどのように観たのか、実際に訪れた展示会場の空気から感じたことをまとめました。
シドニービエンナーレ7会場鑑賞の最適ルートガイド、日本人作家の作品も
シドニー市内7カ所の会場で、現代アート展ビエンナーレ・オブ・シドニー(Biennale of Sydney)が3月16日から始まりました。各会場で見られるアーティスト作品と、会場の特徴やアクセス方法、見て回りやすいルートなどを、実際に鑑賞した体験を基に紹介します。
今回は注目の日本人現代アーティストも5人(井上亜美、流井幸治、柳幸典、野口里佳、高山明)参加しています。
【アート】第21回ビエンナーレ・オブ・シドニー – ディレクター片岡真実、注目作家アイ・ウェイウェイ
2年に1度の現代アートの大型展「ビエンナーレ・オブ・シドニー」が今年も約3カ月にわたり開催されます(3月16日〜6月11日)。第21回目の今年は日本人キュレーターの片岡真実さんを芸術監督に迎え、35の国と地域のアーティスト70組の作品がシドニー市内7カ所で展示されます。観賞は全て無料です。今回の開催テーマや、目玉となる芸術家アイ・ウェイウェイなど、見どころとなるポイントをご紹介します。
【映画】アカデミー賞、オーストラリア出身者は編集賞『ダンケルク』のリー・スミス
第90回・米国アカデミー賞の編集賞を授賞した『ダンケルク(Dunkirk)』の映像編集技術者リー・スミス(オーストラリア出身)のキャリアや、アカデミー賞授賞者のスピーチに登場した「インクルージョンライダー」というキーワード、「多様性」「包摂」の概念についての雑感もまとめました。
【書籍】シドニー公共フェリーの名称になる国民的絵本作家「メイ・ギブス(May Gibbs)」の作品と生涯
港湾都市シドニーの公共フェリー(シドニーフェリー)に導入された新型船舶の名称が「メイ・ギブス(May Gibbs)」に決定したと2018年1月末、NSW交通局が発表しました。フェリーの名称決定の経緯と併せて、オーストラリアの著名な絵本作家/児童文学作家/イラストレーターであるメイ・ギブスの作品と生涯をみていきます。

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