野外彫刻展「ヒルビュー(Hillview)」で体験するアートとオーストラリアの自然

Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt

オーストラリアの美しい自然の中でアート作品を鑑賞できる野外彫刻展「ヒルビュー(Hillview Sculpture Biennal 2018)」が、NSW州南部のサットンフォレスト(Sutton Forest)で5月27日まで開催中です。ローカルのほか日本人を含む海外出身の現代アーティストの作品が、丘陵地帯の自然と一体になった状態で楽しめます。紅葉の美しいオーストラリアの高原エリアでの秋のアート体験をまとめました。

NSW州政府の遺産、ヒルビュー

シドニーから南へ約140キロ、車で1時間半ほどの距離のサザンハイランド地区にあるサットンフォレストは、農地のほか、冷涼な高地の気候を活かしたワイン畑やセラードアのある小さな村です。

丘陵地帯の地形や、そこから見下ろせるのどかな風景を生かした野外彫刻展ヒルビューは、今年で開催4回目を迎えるという比較的新しいアート展。開催は2年に1度です。

開催地であるヒルビューというエリアは、かつてNSW州の公的な宿泊施設だった建物とそれらを取り囲む約60ヘクタールの広大な敷地です。今もNSW州政府が定める遺産として管理されており、そのエリアの名称をそのまま野外彫刻展の略称としているようです。

自然と一体化した展覧会

野外彫刻展ヒルビューの入り口
野外彫刻展ヒルビューの入り口

イラワラ・ハイウェイという道路から会場の敷地内に入ると、小さなチケットブースがあり、ここで入場料を払って場内マップ付きのカタログをもらいます。このカタログはフルカラーで、1作品ごとの説明が記載されたかなりしっかりとした作りでびっくり。

郊外でのイベントなので来場者がどれほどいるのかと考えていましたが、週末ということもありカップルから家族連れまで様々な人が訪れていました。

'St George and the Dragon' by Jimmy Rix, at Hillview Sculpture Biennial 2018
「セントジョージとドラゴン(St George and the Dragon)」ジミー・リックス作
'SIteplan' by Anthony Battaglia, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「サイトプラン(Siteplan)」アンソニー・バタグリア作

作品のほとんどは屋外、一部が屋内に展示されています。屋外展示については写真の通り、ただ作品を見るというより背景の自然の美しさと一緒に楽しめるのがこの展覧会の魅力です。ヒルビューの名前の通り、丘の上という立地なのでなだらかに続く丘陵地帯が遠くまで見渡せます。

この日は曇りで時折晴れ間が覗くという天候でしたが、天気やこの時期ならではの紅葉の進み具合によってもオブジェの見え方が違ってきそうな印象でした。

ほかにも、会場内に生えている天然の木や丘陵地ならではの地形を活かして展示することを想定して作られた作品がいろいろありました。

'Castle in the Sky' by Peter Nilsson at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「キャッスル・イン・ザ・スカイ(Castle in the Sky)」ピーター・ニルソン作

枯れ木の上の、鑑賞者のはるか頭上に展示された、鳥の巣のような作品。つららに似た形のパーツを組み合わせて作られています。素材は、テレビの画面部分をリサイクルして生成されたものなのだとか。

'An Odd Bunch' by Akira Kamada, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「オッド・バンチ(An Odd Bunch)」アキラ・カマダ作

こちらは地面に横たわるように伸びる木の枝の上に展示された作品。枝から大きなキノコのような白いオブジェが生えている風で、自然の中で異質感と奇妙な調和を感じさせます。

'A Burden' by Andy Townsend & Susie Bleach, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「バードン(A Burden)」アンディ・タウンセンド&スージー・ブリーチ作

坂の多い地形を登る荷役の馬を、金属で象った作品。鉄製とは思えないしなやかな馬の体つきと、そこに加わる積み荷の重さがじわりと伝わってきました。

'Wisdom Weaving' by Jessica Raschke, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「ウィスダム・ウィービング(Wisdom Weaving)」ジェシカ・ラシュキ作

こちらは葉の茂る低木をそのまま作品の一部とし、文字の書かれた白い布テープを木の枝に結び付けたもの。鑑賞者は木陰に立ち、そこに記された言葉を読むことができます。

Details of 'Wisdom Weaving' by Jessica Raschke, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
布テープには音楽家の名前や詩のような言葉が

マイルス・デイビスやメタリカといったミュージシャンの名前のほか、歌詞のような詩のような無数の手書きのテキストがびっしり。風が吹くたびに白い包帯のようなテープがゆらゆらと揺れ、どこか儚くも見えてきれいでした。こうした展示方法で表現される作品は、野外展示ならではの醍醐味を感じさせてくれます。

ほかにも、紅葉した木々の間を縫うように合計40点あまりが展示されていました。比較的乾燥した気候のNSW州は、よほどの雨の後でもない限り地面がぬかるむようなこともなく、こうした野外展示に適しているといえそうです。特にこの季節は落ち葉を踏みしめながら歩くのが心地良く、シドニーの都市部とはひと味違う秋らしいオーストラリアを体験できました。

屋内に展示された作品も

'Honey Fungus and Friends' by Margarita Sampson, at Hillview Sculpture Biennial 2018. Photo by HeapsArt
「ハニー・フンガス・アンド・フレンズ」マルガリータ・サンプソン作

ヒルビューに元々ある歴史的な建築の中でも、展覧会の作品が一部展示されていました。こちらは野外で展示されていた作品と同一アーティストの作品。

展覧会全体を通じて、オーストラリアで活躍するアーティストの作品が中心となっていたようです。シドニーのボンダイ・ビーチなどで毎春に開催される野外彫刻展「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」の出展作家の名前も見られ、オーストラリアの旬なアーティストを知ることができたという意味でも充実した展覧会でした。

何より、オーストラリアの豊かな自然や広大な眺めと一緒に開放的な気分でアートを体験できるという点が素晴らしいです。ヒルビューの会場はシドニーからもキャンベラからも約1時間半という立地ですが、ドライブついでに訪れる価値のあるイベントでした。

ヒルビューの会場内はなだらかな坂が多いので、訪れる方にはフラットシューズがお勧めです。また高地であるため都市部や沿岸部より気温が少し低めなので、寒さ対策もお忘れなく。

Hillview Sculpture Biennal 2018
住所:Illawarra Highway, Sutton Forest NSW 2577
日程:2018年4月28日〜5月27日
料金:大人15ドル、子供無料
Web: http://hillviewsculpture.com

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