【アート】そもそもビエンナーレって? 片岡真実さん他トークイベント

「そもそもビエンナーレとは世界的に見てどういう展覧会なのか?」「出品アーティストはどうやって決められているのか?」などの疑問を専門家が分かりやすく紐解く、というトークイベント「Biennale Archive Stories #3で」に参加してきました。来年開催の大型展覧会「ビエンナーレ・オブ・シドニー(BoS」のためのイベントで、8月26日(土)にNSW州立美術館(Art Gallery of NSW)で開催。美術史の研究家などによる講演で、面白い話を聞くことができたので、書いておこうと思います。

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会場はNSW州立美術館内のドメインシアター

参加無料のイベントだったとはいえ、思ったより多くの人が参加しており、アートへの関心の高さに驚き。来場者は白人がほとんどという印象でしたが、アジア系の顔もちらほら見かけました。

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トークイベントBiennale Archive Stories #3で登壇した片岡真実さん

まず、芸術監督の片岡真実さんの挨拶。片岡さんは東京・森美術館のチーフ・キュレーターで、2009年のアイウェイウェイ展や2012年の会田誠展など、話題の展覧会をたくさん手がけていることで知られています。

挨拶の中で、来年開催のBoSは21回目なので、これまでの20年のビエンナーレ・オブ・シドニーを踏まえ、第21回は、ここから先の20年の方向性にもかかわる節目の意味を持つでしょう、というようなことを言っていました。彼女が話している姿を見るのは初めてだったのですが、落ち着いた声で品良く話す方だなという印象でした。

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「Post-North? Sydney and the Challenges of the ‘Global’ Exhibition」と題した講演を行ったCharles Green教授

最初に講演を行ったのはメルボルン大学のチャールズ・グリーン教授。美術史の研究家で、世界中のビエンナーレ(2年に1回開催)やトリエンナーレ(3年に1回開催)など現代アートの国際的な展覧会の歴史や今後の課題などについて話しました。

彼曰く「ビエンナーレは、新たなアートを試す場でもある」とのこと。国や地域ごとの特色のほかに、開催テーマとして時代を反映したものも多いようです。

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Terry Smith教授は「Biennials in the World Picture: Sydney in Particular」をテーマに講演
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Terry Smith教授の講演で紹介された、ビエンナーレのキュレーションの定義

続いて、シドニー大学や海外の大学でも教鞭を執るテリー・スミス教授。美術史の研究家で批評家でもあるそうです。

BoSが始まった1973年からずっと見てきたというスミス教授(1回は、海外にいて見られなかったそうですが)。どんな風にキュレーションされ、どんな影響をアートやアート以外のものに与え、どんな変遷を経てきたのかなど、BoSそのものについての話でした。約45年も見続けてきたというのは重みがあります。

毎回、BoSに掲げられているというテーマ(というかタイトル)の違いも紹介されました。ちなみに来年2018年のテーマは「SUPERPOSITION: Art of Equilibrium and Engagement 」です。

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あっという間の1時間半。最後は3人のトークセッション

イベントの最後には3人によるトークセッションも。ここで出た話で面白かったのが、BoSの出品作の「割合」のこと(一部聞き逃してしまったのですが、来年ではなく、これまでの平均、だったと思います)。

  • 30% - 国内アーティストの作品
  • 30% - 新たな参加アーティストの作品
  • 30% - 過去に参加したことのあるアーティストの作品
  • 10% - アート以外の作品

なんといっても最後の「10% - アート以外の作品」が断然気になります。つまり、この世でアートとして認知されているものではない「何か」に、アートとしての見方や位置付けを与えて展示する、ということなのではないでしょうか。推測ですが。

「何をもってアートとするか?」は現代アートの場合、一般人から見ると特に難しく感じるのですが、その10%の「何か」の中に見出されたアート性を、「こういう見方もできますよ」と提示してくれるのであれば、ちょっと面白そうな気がします。

このトークイベント、今回はシリーズ第3回目ということでした。無料とは思えない興味深い内容で、来年のBoS開催がますます楽しみになりました。

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